水戸地方裁判所 昭和63年(わ)200号 判決 1988年7月01日
本籍
茨城県鹿島郡鹿島町大字根三田一七八番地
住居
右同所
無職
小池恒治
大正一二年七月一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官大鶴基成及び弁護人菅谷哲治各出席の上審理して、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年六月及び罰金二、五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、有価証券売買の継続取引を行い多額の株式売買益を得ていたものであるが、所得税を免れようと企て、所得税確定申告にあたっては、給与所得、事業所得、不動産所得、譲渡所得のみを申告し、株式売買益についてはなんら申告しない方法によって所得を秘匿した上、
第一 昭和六〇年三月八日茨城県行方郡潮来町大字延方字三カト前甲一、三五八番地所在の潮来税務署において、同税務署長に対し、同五九年分の実際総所得金額が二、三一九万三、三五七円であったにもかかわらずその総所得金額が一、三一四万三、〇五三円で、これに対する所得税額が二六八万二、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同円分の正規の所得税額七六六万九〇〇円との差額四九七万八、八〇〇円を免れ、
第二 昭和六一年三月一〇日前記潮来税務署において、同税務署長に対し、同六〇年分の実際総所得金額が一億四、〇三一万九、七九一円であったにもかかわらず、その総所得金額が一、二〇〇万二、〇二二円で、これに対する所得税額が二二九万九、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額八、五一〇万七、二〇〇円との差額八、二八〇万七、七〇〇円を免れ
第三 昭和六二年三月一四日前記潮来税務署において、同税務署長に対し、同六一年分の実際総所得金額が五、七五八万五七一円、分離課税による長期譲渡所得金額が八、六三一万四、八一七円であったにもかかわらず、その総所得金額が一、二八二万六、二六六円、分離課税による長期譲渡所得金額が八、六三一万四、八一七円で、これに対する所得税額が二、二一八万円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額四、七八二万七、二〇〇円と右申告税額との差額二、五六四万七、二〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人作成の答申書二通及び被告人の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官原村薫作成の株式売買益調査書、東京証券芽場町支店調査関係書類、受取利息調査書、支払手数料調査書、租税公課調査書、接待交際費調査書、通信費調査書、コンサルタント料調査書、旅費交通費調査書、消耗品費調査書、支払利息調査書、有価証券取引税調査書、配当所得調査書、みなし犯則損調査書
一 大蔵事務官小林茂秋作成の相対取引一覧表調査書、推認した株式売付金額の調査書
一 大蔵事務官湯本茂作の東京証券芽場町支店調査関係書類
一 大蔵事務官西郷隆夫作成の三田証券調査関係書類
一 大蔵事務官小林定雄ほか一名作成の山一証券五反田支店調査関係書類
一 大蔵事務官品川國雄作成、同坂本博美作成、同小島秀幸作成、同山崎勝義作成(二通)の各検査てん末書
一 東京証券株式会社芽場町支店長高荒和已作成(三通)、三田証券株式会社取締役社長三田賢治作成(二通)、三田証券株式会社経理部長市原靖弘作成(二通)、山一証券株式会社五反田支店次長武宏明作成、山一証券株式会社五反田支店長笹本亘作成、中央証券株式会社佐原支店長三橋和幸作成(二通)、ユニバーサル証券株式会社佐原支店長千葉博作成、水戸証券株式会社佐原支店長長谷川武作成、株式会社茨城相互銀行鹿島支店長井関恒夫作成(二通)、株式会社関東銀行北鹿島支店長横山弘作成、株式会社ライフ東京支店課長溝田充作成、ファミリー信販株式会社本店ローンコーナ所長角村勝作成、東京証券金融株式会社代表取締役庭山慶一郎作成、三栄総業株式会社代表取締役三田貞子作成の各答申書
一 検察事務官宇野公博作成の電話聴取書
一 大川すみ、増田清作、平岡孝男、小松崎敏之、山口貞男、萩原繁郎、山辺一雄、高塚正義の検察官に対する各供述調書
一 潮来税務署長曽根英二作成の証明書三通
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官原村薫作成の修正損益計算書(自昭和五九年一月一日至昭和五九年一二月三一日のもの)、脱税額計算書(自昭和五九年一月一日至昭和五九年一二月三一日のもの)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官原村薫作成の修正損益計算書(自昭和六〇年一月一日至昭和六〇年一二月三一日のもの)、脱税額計算書(自昭和六〇年一月一日至昭和六〇年一二月三一日のもの)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官原村薫作成の修正損益計算書(自昭和六一年一月一日至昭和六一年一二月三一日のもの)、脱税額計算書(自昭和六一年一月一日至昭和六一年一二月三一日のもの)
(法令の適用)
被告人の判示第一ないし第三の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、情状によりそれぞれ同条二項を適用し、各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑とを併科すこととし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年六月及び罰金二、五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
そこで、主文のとおり判決する。
(裁判官 鈴木秀夫)